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6 min read AI協働開発マーケティング

連載「温故知新マーケティング実験室」· 第6編/全13編

「AIが書いた」と正直に言って信頼される方法

AI時代の信頼のつくり方(連載 6)

AIに書かせた記事、「AIが書きました」と明かす勇気、ありますか。架空の人間専門家を装うより、正直な開示と組織の裏付けと方法の透明性で信頼を積む。AI時代の名乗り方を一緒に。

安宅春樹 (Ataka Haruki)

— AZASLAB代表 ・ AIエージェント開発ディレクター

— Shimizu Fumio Architects Co., Ltd. 取締役

「これ、AIが書きました」と言う勇気はありますか

AIに記事を書かせたとき、最後に少し迷いませんか。これを公開するとき、AIが書いたと正直に言うべきか、それとも黙っておくべきか。正直に言えば軽く見られそうだし、かといって人間が書いたふりをするのも、なんだか落ち着かない。その居心地の悪さ、よく分かります。

前回お話しした温故知新マーケティング実験室では、記事をAIが書いて、AIが公開します。だから、この「どう名乗るか」という問題は、避けて通れませんでした。今日は、AIに書かせた記事をどう名乗れば信頼してもらえるのか、実験室で選んだ答えを、あなたの記事にも使える形で一緒に考えてみましょう。結論を先に言えば、隠すより、正直に開示するほうが、むしろ信頼につながります。

架空の専門家をでっち上げると、逆効果になる

まず、やってしまいがちで、しかも危ういやり方から。それは、いかにも実在しそうな人間の専門家を著者に仕立てて、立派な経歴を添えることです。「業界20年のベテラン」「元大手企業のマーケター」。それらしい肩書きを付ければ、信頼されそうな気がします。

けれど、これは逆効果になりやすい。1つは、単純にばれるからです。検索しても実在が確かめられない人物は、かえって怪しく見えます。もう1つは、もっと根の深い問題です。読者を欺いて得た信頼は、ほんとうの信頼ではありません。1度ほころべば、記事一本どころか、サイト全体の信用が傾きます。偽の経歴は、信頼の前借りのようなもので、いつか高い利息で取り立てられます。だから実験室では、この道は最初から選びませんでした。

信頼は、どこから来るのか

そもそも、ウェブの記事の信頼は、何で測られているのでしょう。よく挙げられるのが、経験、専門性、権威性、信頼性、という4つの視点です。実際にやった経験があるか。その分野に詳しいか。まわりから認められているか。そして、正直で安心して読めるか。検索エンジンも、人の読者も、だいたいこのあたりを見て、この記事は信じてよいかを判断しています。

ここで大事なのは、これらの多くは、書き手が人間かAIかという一点だけで決まるわけではない、ということです。誰が責任を持って出しているのか。何の専門なのか。どうやって作られたのか。この3つは、書き手がAIであっても、きちんと示すことができます。つまり、人間のふりをしなくても、信頼を積む道は残されているのです。実験室は、その残された道を、まっすぐ行くことにしました。

正直に言うと、4つのうち「経験」だけは、AIにとっていちばん難しい部分です。実際に汗をかいてやってみた、という生身の手応えを、AIは直接には持ちにくい。けれど、ここにも抜け道があります。実験そのものを、経験の代わりにすればいいのです。AIだけでブログを運営して、こういう案が出て、こう没になって、ここでつまずいた——その一部始終を記録していけば、それは立派な「やってみた経験」になります。借り物の経歴ではなく、ほんとうに起きたことだけを積み上げる。経験が足りないなら、いま実際にやっていることを、正直に記録する。これがいちばん地に足のついたやり方でした。

装わず、正直に開示する

実験室のブログの著者は、アズラビという名前のキャラクターです。AZASLABの研究員という設定の、AIです。そして、そのことを隠しません。著者の紹介には、この記事はAIが自律的に書いていて、人間は観察役にまわっている、とはっきり書いてあります。

不思議なもので、正直に「AIが書いています」と明かすほうが、こそこそ隠すより信頼されます。読者は、隠しごとの気配にとても敏感だからです。何かをごまかしている様子があると、内容まで疑わしく見えてくる。逆に、最初に手の内を明かしてしまえば、読者は安心して中身そのものに向き合えます。開示は、弱みをさらすことではなく、むしろ「この書き手は嘘をつかない」という、いちばん大事な信頼の土台を差し出すことなんですね。

1人の名前ではなく、組織で裏付ける

とはいえ、AIが書いていますと明かすだけでは、心もとない。そこで効いてくるのが、組織の裏付けです。

アズラビは、ただ宙に浮いた一キャラクターではなく、AZASLABという組織に所属しています。記事の責任は、最終的にこの組織が引き受ける。匿名の誰かが書き散らした記事と、名前のある組織が責任を持って出す記事とでは、同じ内容でも重みが違います。人間の社会でも、所属のはっきりした人の話のほうが、安心して聞けますよね。それと同じ仕組みを、AIの書き手にも持たせている、というわけです。書き手が前に出すぎず、背後の組織が支える。この構えが、一人歩きの不安を抑えてくれます。

どうやって作っているかを、見せる

もう1つ、実験室が信頼の素材にしているのが、作り方の透明性です。

どんな手順で記事が生まれ、どこで品質を点検しているのか。前回までにお話ししてきた、アイデアを起こす役と、それを厳しく止める検査役と、人は介入せず観察にまわるという二重の仕組み。これらをこうして連載で公開していること自体が、方法をオープンにする、ということです。ブラックボックスから出てきた記事を「信じてください」と言うより、作り方の中身を見せて「こうやって作っています」と示すほうが、ずっと誠実です。あなたがいま読んでいるこの連載は、実験の記録であると同時に、信頼してもらうための開示そのものでもあります。

そして、こうした「誰が・どんな専門で・どう責任を持って書いたか」は、人の読者だけでなく、機械にも同じ形で伝えています。前回お話しした、ページに埋め込む機械向けの自己紹介カードです。人にもAIにも、隠さず同じことを伝える。名乗り方に裏表がないことが、いちばんの信頼になります。

あなたがAIに書かせた記事に、署名するなら

今日は、AIに書かせた記事を、どう名乗れば信頼されるかを見てきました。最後に、あなたの記事にも応用できる形に、3つだけまとめます。

1つ、人間のふりをしない。架空の経歴は、ばれても、ばれなくても、いずれ信頼を損ないます。2つ、AIが書いたことを正直に開示し、誰が責任を持つのかを示す。個人名でも、屋号でも、組織でもかまいません。3つ、どうやって作っているか、その手順を少しだけでも見せる。完璧さより、透明さのほうが信じてもらえます。

もしあなたが、AIに書かせた記事を世に出すことにためらいを感じているなら——隠すという選択を、まず外してみてください。正直に名乗ったうえで、所属と作り方を添える。それだけで、その記事は「人間のふりをした怪しい記事」から、「AIが正直に書いた、出どころの確かな記事」に変わります。信頼は、装うものではなく、開いて差し出すもの。そう考えると、名乗り方は、ずいぶん気楽になります。背伸びをしなくていい、というのは、書き続けるうえでも大きな救いです。

次回は、その記事を人の手を借りずに動かし続けるための——夜中にこけても勝手に立て直す、無人運用のしくみを一緒に見ていきます。


この実験のプロジェクト概要は 温故知新マーケティング実験室 に。AIエージェント群の構成や設計思想を、もう少し詳しくまとめています。