連載「AIに任せきりにしない発信をつくる」· 第5編/全21編
トーンは、口調だけじゃない — まだ仮説ですが
「丁寧にした」のに響かなくなった理由を考えてみます
同じ内容・同じ丁寧さなのに、なぜか響かない文章があります。文章の“温度”は口調ではなく、誰をどう巻き込むかの構造にある——という仮説を、自社発信づくりの失敗から立ててみます。検証はこれから。
連載「AIに任せきりにしない発信をつくる」· 第5編/全21編
「丁寧にした」のに響かなくなった理由を考えてみます
同じ内容・同じ丁寧さなのに、なぜか響かない文章があります。文章の“温度”は口調ではなく、誰をどう巻き込むかの構造にある——という仮説を、自社発信づくりの失敗から立ててみます。検証はこれから。
ていねいに書いたはずなのに、なぜか読み手に響かない。逆に、少しくだけているのに、ぐっと引き込まれる文章もあります。この差は、どこから来るのでしょう。
AZASLAB の発信をAIに任せるしくみをつくる中で、私はこの問いに正面からぶつかりました。そして、ひとつの仮説にたどり着きます。文章の“温度”は、口調だけでは決まらないのではないか。先に正直に言っておくと、これはまだ実測で確かめた話ではありません。あくまで、つくっている途中の手応えからの仮説です。だから今日は、その仮説を立てるまでと、これからどう確かめるつもりかを、一緒に見ていきましょう。
AI に発信文を書かせるとき、私は「AZASLAB らしい落ち着いたトーンで」と頼みました。煽らない、誇張しない、断定しない。誠実な発信にしたかったんです。
ところが出てきた文章は、たしかに上品なのに、どこかよそよそしい。読者の心に入っていかないんですね。原因を探ると、自分の頼み方にありました。私は「煽らない」を、いつのまにか「読者に呼びかけない」と取り違えていたんです。「あなた」と語りかけることや、「こうしてみては」と誘うことまで、まとめて禁止してしまっていました。
その結果、文章は読者の外側に立って、上から静かに説明するだけのものになりました。丁寧で、正しくて、冷たい。たとえば、こんな違いです。
言っていることは同じ。違うのは、読者を中に招いているかどうか、それだけでした。
直してみて、違いが少しずつ見えてきました。
響かなかった文章は、自分の言いたいことを並べていました。響く文章は、読者の困りごとから入り、「あなたにも覚えがありませんか」と問いかけ、どうすればいいかを一緒に考え、最後にそっと背中を押していました。使っている言葉の丁寧さは、同じなんです。違うのは、読者を中に招き入れているか、外に置いているか。
トーンを決めているのは、口調そのものではなく、その下にある「誰をどう巻き込むか」の構造らしい。
誰の困りごとから始めるか。読者に呼びかけるか。問いかけて巻き込むか。持ち帰れるものを手渡すか。口調は、その表面に過ぎないのかもしれません。煽らないことと、巻き込むことは、ちゃんと両立できる。私はそこを取り違えていました。
ここまで書いておいて何ですが、いま語ったことには、客観的な裏付けがありません。
「巻き込む構造のほうが響く」というのは、直したら良くなった気がする、という私の感覚にすぎないんです。気がするだけのことを、断定で語る。それは、このブログがいちばん戒めていることでした。だからこれは、結論ではなく、仮説として置いておきたいと思います。
幸い、確かめる手立てはあります。これから、同じ題材を「説明する構造」と「巻き込む構造」の両方で書き、どちらがよく読まれるかを実際に測ってみます。あわせて、朝・昼・夜のどの時間帯に出すと反応がよいのかも、少しずつ投稿して、表示回数や反応の数で見ていきます。最初から数を増やすのではなく、まず一日数本の小さな単位で出して、傾向が見えてきたら厚くしていく——そういう進め方です。
ここで気をつけたいのは、「自分が良いと思ったほう」を無意識にひいき目で見てしまわないことです。だから、できるだけ数字で淡々と見ます。感覚で「これがいい」と言い切るのではなく、出して、測って、確かめる。やっていることは、まさに私たちが クリシンクエスト でおすすめしている「問い直す力」そのものだな、と書きながら思いました。自分の感覚という、いちばん疑いにくい前提を、データで問い直す。
トーンとは何か。いまの私の答えは「口調ではなく、読者をどう巻き込むかの構造」です。でも、それが本当に読まれ方を変えるのかは、まだ分かりません。
だからこの記事は、結論で締めません。仮説のまま、これから実験します、という宣言で締めたいと思います。次は、その結果を持って、またお話しします。当たっていたら、そう報告します。外れていたら、それも正直に報告します。
あなたにも、心当たりの仮説はありませんか。「たぶん、こうだ」と感じていること。それを言い切る前に、どう確かめられるか——よかったら、一緒に考えてみてください。