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4 min read AI協働問い直す力発信

連載「AIに任せきりにしない発信をつくる」· 第3編/全4編

AIが書いた“もっともらしい話”を、そのまま流さないために

自分の発信にこそ、事実確認のひと手間を

ネットやAIから拾った“それっぽい話”は、そのまま信じると少し危ういものです。発信する側こそ、裏付けを確かめたい。自社SNS自動化に事実確認のゲートを入れた理由を、一緒に考えます。

安宅春樹 (Ataka Haruki)

— AZASLAB代表 ・ AIエージェント開発ディレクター

— Shimizu Fumio Architects Co., Ltd. 取締役

その“いい話”、裏は取りましたか

SNSで見かけた、驚きの数字。AIが自信たっぷりに返してきた説明。どれも、もっともらしく見えます。そのまま自分の言葉として発信したくなる——でも、ちょっとだけ待ってください。

AZASLAB の発信を自動化するしくみをつくるとき、私はここで一度立ち止まりました。困りごと(Pain)を Reddit から拾って発信する、という設計にした以上、拾ってくる声には、間違いや誇張も混じります。それを無防備に流せば、自分たちが“本当っぽい嘘”の運び手になってしまう。だから、発信の前に事実確認のゲートを置くことにしました。

今日は、なぜ「発信する側こそ」裏を取ったほうがいいのかを、一緒に見ていきましょう。

もっともらしさは、正しさではありません

人は、流暢で具体的な話を、つい正しいと感じてしまいます。

たとえば、こんな投稿が流れてきたとします。「あるひと言を足すだけで、3日悩んでいた問題が一瞬で解けた」。具体的で、数字があって、体験談の形をしている。シェアしたくなりますよね。でも、その「3日」は本当でしょうか。同じやり方で、他の人もうまくいくのでしょうか。たまたま一回うまくいっただけ、かもしれません。

流暢さと正しさは、別物です。AIは知らないことでも自然に答えますし、ネットの体験談は誇張されやすい。Reddit の投稿も、当人の思い込みや一回きりの成功談であることが少なくありません。

もっともらしさは、確かめていないことを、きれいに隠してくれてしまう。

発信する側がそこに無自覚だと、間違いは整った言葉に乗って、しかも発信者の信頼を借りて、広がっていきます。

「拾って流す」だけにしなかった理由

自動化の怖さは、量とスピードです。困りごとを拾い、要約し、投稿する——この流れを自動で回せば、たしかに発信は増えます。でも、間違いも同じ速さで増えてしまう。手で書いていた頃なら一日数本だったものが、自動なら一日何十本にもなる。ミスも、そのぶん増幅されます。

そこで、生成した内容に対して「この主張に裏付けはあるか」を点検するひと段を挟みました。文章に含まれる主張を洗い出し、裏付けの取れないものが一定の割合を超えたネタは、自動で見送ります。人が最終確認する前に、まず機械的なふるいにかける。発信を増やすことと、確かさを手放さないことを、両立させたかったんです。

これは、型図鑑でいう「出典ロンダリング型」や「数字トリック型」を、出す前に自分でつぶす作業に近いものです。「研究によると」と書きたくなったら、誰の・いつの研究かを確かめる。「2倍」と言いたくなったら、何と比べて2倍かを確かめる。確かめられないなら、書かない。それだけです。

たとえば、ある投稿のもとになった声に「このツールで作業時間が9割減った」とあったとします。インパクトのある数字です。けれどゲートは、「9割」を支える根拠が元の文章に見当たらないことに気づきます。誰が、何の作業を、どう測って9割なのか。そこが空白のまま発信すれば、私たちは確かめていない数字を、自分の信頼で保証してしまうことになる。だから、その一本は見送るか、数字を外して「短縮できたという声がある」という確かな言い方に直す。派手さは少し減りますが、嘘は混じりません。地味でも、こちらを選びたいのです。

これは、私たちのテーマそのものでした

事実確認のゲートを入れながら、これは クリシンクエスト で扱っているテーマと同じだな、と気づきました。

私たちが日々向き合っているのは、AIの出力を鵜呑みにせず、根拠や前提を問い直す力です。それを、ゲームや読みもので「読者に」おすすめしている。だとしたら、自分たちの発信にこそ、同じものさしを当てないと筋が通りません。問い直す力を語る人間が、裏を取らずに発信していたら、それはただの言行不一致になってしまいます。

そして事実確認は、量産コンテンツとの差にもなります。速く大量に出すだけなら、いまや誰にでもできる。確かめてから出す、というひと手間こそが、信頼の差になっていく。速さで勝てない時代だからこそ、確かさで選ばれたいと思っています。

おわりに:発信の前の、たった一問

完璧に検証しきる必要はありません。大事なのは、出す前に一度だけ立ち止まることです。

これは、誰の・いつの・どこの話か。一次情報にたどれるか。その一問を挟むだけで、間違いをそのまま広げてしまう回数は、確実に減ります。AI に発信を手伝ってもらう時代だからこそ、最後に「裏は取れている?」と問う役は、人間が引き受けたい。AIは速く書いてくれますが、その内容に責任を持つのは、出した私たちです。

あなたが次に何かをシェアしようとするとき、その“いい話”は、確かめたうえでのものでしょうか。指が「投稿」に伸びる前に、一度だけ、問い直してみてください。