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6 min read AI協働開発設計思想

連載「AIに任せきりにしない発信をつくる」· 第12編/全21編

もし止まって、また動き出したら

予約配信を本番にする前に、考えておいたこと

予約投稿を自動で出すしくみ。本番にする前に、ふと気になりました——もし途中で止まって再開したら、溜まったぶんはどうなる? 確かめたら、一斉に飛ぶ作りでした。溢れさせる前に手を打った話を、自社SNS自動化づくりから一緒に。

安宅春樹 (Ataka Haruki)

— AZASLAB代表 ・ AIエージェント開発ディレクター

— Shimizu Fumio Architects Co., Ltd. 取締役

本番にする直前に、ふと気になったこと

自動で動くしくみを、いよいよ本番に切り替える。その直前に、ふと「もし途中で止まったら、どうなるんだろう」と不安がよぎった経験は、ありませんか。

AZASLAB の発信は、予約配信のかたちをとっています。下書きを承認すると、決めた時間に、裏方のしくみが静かに送り出す。これを「お試し」から「本番(実際にXへ出す)」へ切り替えようとした、まさにその直前でした。私は、ひとつ気になったんです。「もし裏方がしばらく止まって、あとで再開したら——止まっている間に予定時刻を過ぎたぶんは、いったいどうなるんだろう」と。

今日は、その不安を確かめて、まだ何も起きていないうちに手を打った、という話を一緒に見ていきましょう。実際にやらかした失敗談ではありません。「やらかす前に気づけた」ことの、ささやかな記録です。

確かめてみたら、一斉に飛ぶ作りだった

気になったので、しくみの作りをたどってみました。

裏方は、定期的に「いま出すべきものはあるか」と見回り、予定時刻を過ぎたものを出していきます。ふだんは、時間が来た1本がすっと出るだけ。でも、もし裏方が止まったら——止まっていても時間は進むので、予定時刻はどんどん過ぎていきます。出す係が動いていないぶん、出されないまま予約が溜まる。そして再開した瞬間、裏方は「予定を過ぎたもの」を素直に全部見つけて、いっせいに出してしまう。半日止まっていれば、半日ぶんの予約が、ものの数分でなだれのように流れ出す。そういう作りでした。

これは、けっこう怖い。静かだったタイムラインに、急に投稿が連続で並ぶ。受け取る側からすれば、いきなり騒がしくなって、かえって読み飛ばされます。もし設定に間違いがあれば、その間違いまで一気に増幅されてしまう。

こわいのは「動いているとき」より、「止まって、また動き出すとき」のほう。

幸い、まだ本番にする前でした。だから、実際に溢れさせてしまう前に、作りを直すことにしたんです。動かしてから慌てるのではなく、動かす前に「止まったあと」を考えておく。それだけのことですが、これがいちばん効くと感じています。

念のため言い添えると、この「過ぎたものは全部出す」という作りは、それ自体が間違いだったわけではありません。裏方がずっと動き続けている前提でいるなら、これでいいんです。時間が来たものを、来た順に出していくだけ。問題が顔を出すのは、その前提が崩れたとき——つまり、長く止まって、たくさんのぶんがいっぺんに過去になったときだけです。ふだんは正しく働くものが、非常時にだけ牙をむく。だから動いている今は気づきにくいし、気づけた今のうちに直しておく価値があるんですね。

「やり直す」ではなく「配り直す」

そこで、方針をこう決めました。といっても、手を動かして実装するのは AI で、私は「どう直すか」を決める係です。今回、AI にこう頼みました。溜まった予約を「過ぎたぶん、今すぐ全部やる」のではなく、「いったん集めて、これからの枠に配り直す」ように、と。

たとえば、半日止まって、出しそびれた予約が何本かあったとします。これを今いっぺんに出すのではなく、「これから先の、空いている時間枠」へ順番に割り当て直す。今日のぶんが埋まれば明日へ、その次へと送る。そうすれば、溜まったぶんも、一日に数本ずつの落ち着いたペースに均されて出ていきます。

大事なのは、「遅れた」という焦りに引きずられて、慌てて取り戻そうとしないことです。猛スピードで挽回しても、読む人には騒がしいだけ。遅れは、巻き返すものではなく、ならすもの。急いで取り戻そうとするほど、受け取る人の負担は増え、もし間違いがあれば、その広がりも速くなります。だから再開のときほど、ひと呼吸おいて、ゆっくり配り直すくらいで、ちょうどいいんですね。

ちょっとの遅れと、大きな遅れを、分ける

ただ、ここで1つ気をつけました。「遅れ」と一口に言っても、種類があるからです。

裏方が元気に動いていても、数分の遅れはふつうに起きます。見回りのタイミングと予定時刻が、きっかり一致するわけではないからです。この数分は、ただの正常なゆらぎ。これまで「配り直し」にしてしまうと、ふだんの1本まで未来へ飛ばされて、いつまでも出なくなってしまう。

そこで「猶予」を一本、線として引きました。予定から少しだけ過ぎたものは、これまでどおり素直に出す。けれど、大きく過ぎたもの——明らかに「止まっていたから出せなかった」とわかる遅れ——だけを、取りこぼしとみなして配り直す。「ちょっと遅れた」と「ごっそり溜まった」を、同じ箱に入れない。この線引きで、ふだんは普通に動き、非常時だけ立て直しが働くようにできました。

「順番が大事なもの」と、「そうでないもの」

配り直すとき、もう1つ効いたのが、中身によって扱いを変えたことです。

私たちの発信には、性質のちがう2つの流れがあります。ひとつは、連載のように順番に意味がある告知。1回目、2回目、3回目と読んでほしいので、順序が崩れると話が通じません。だから立て直すときも、順番はそのまま、全体をそっくり後ろへずらす。3番目が1番目より先に出る、ということが起きないようにしました。

もうひとつは、1本ずつで完結する、順不同でかまわないネタです。こちらは順番にこだわらず、空いている枠へ淡々と詰め直すだけ。入れ替わってもかまわない。同じ「配り直す」でも、順番が命の流れと、順番を問わない流れでは、正しいやり方がちがう。中身の性質を見て、立て直し方そのものを分ける。これは発信に限らず、溜まった用事を片づけるときにも、そのまま使える発想だと思います。

まず、「止まったこと」に気づけるか

最後に、いちばん手前の話を。どんなにきれいな立て直しを用意しても、止まったことに気づかなければ、その出番は来ません。

裏方は、ふだん静かに動いています。だからこそ、静かに止まったときも、しばらく気づけない。投稿が出ていないことに、半日たって「そういえば」と気づく——これが、いちばん傷を広げます。そこで、しくみが「私はまだ動いています」という合図を定期的に送り、その合図が途切れたら止まったとわかる——そんな見張りも、AI に作ってもらいました。上手な戻し方を用意するより先に、「早く気づける」ようにしておく。立て直しの第一歩は、技術よりも「気づき」のほうにあるんですね。

おわりに:そのしくみ、止まって戻したら何が起きますか

自動で動いてくれるしくみは、ありがたいものです。けれど、ありがたさに慣れると、つい「動いている前提」で考えてしまう。本当に気をつけたいのは、止まったとき、そして止まったものを動かし直すときのほうでした。

今回の私は、たまたま本番にする前に立ち止まって、「止まったらどうなる?」と確かめられた。だから、溢れさせる前に直せたんです。派手な備えではありません。溜まった分は配り直す、遅れは大小で分ける、順番が大事なものは順序ごとずらす、そして何より、止まったことに早く気づく。それだけです。

あなたが頼りにしている「自動でやってくれるしくみ」は、もし1度止まって、また動かし直したとき、何が起きるでしょうか。再開のひと押しで、溜まっていたものが、いっせいに動き出したりしないでしょうか。本番にする前に1度だけ、「止まったあと」を思い浮かべてみる。それだけで、動いている今のうちにできる備えが、見えてくるかもしれません。